ダブリンのエッセンス

調香師が探求するダブリンの街の感覚的愉しみ方
マリア・アスリモスカ - ダブリンのブティック「パフューマリア(Perfumarija)」にて
マリア・アスリモスカ
調香師&起業家

古典的な訓練を重ね、フランス南東部のグラース研究所(Grasse Perfumery)を卒業した調香師、マリア・アスリモスカは、ある特定の香りがひとの記憶を甦らせるということに心を奪われました。ダブリンのウェストベリー・モールにある、希少なフレグランスを扱うパフューマリア(Perfumarija)は彼女が創業した香水店で、現在彼女はクリエイティブディレクターを務めています。

彼女は、私たちをさまざまな時代や場所にいざなってくれる微かな香水の香りを愛してやみません。例えば、彼女にとってスイカズラはマケドニアで過ごした子供の頃を想い起こさせ、エンポーリオ・アルマーニの「White」は、ティーンエイジャーのときの初恋の人の思い出を甦らせます。

ダブリンのウェストベリー・モールにあるマリア・アスリモスカのブティック「パフューマリア」は店内の一部がラボになっています。
懐かしい香り
香水への熱い想い

若き日のアスリモスカの、香りに対する情熱が芽生えたのは、マケドニアの幼馴染の家で引き出しいっぱいに詰まった世界中の装飾石けんを発見したときでした。その家に遊びに行くたびに、彼女は幼馴染と一緒にその引き出しを開き、ハートや蝶々に模られた石鹸の甘い香りを楽しみました。

数十年経った今、アスリモスカを香水の世界へ導いたあの好奇心や発見の喜びは、パフューマリアで体験することができます。ダブリンの中心部に佇む、明るい白で施されたこのショールームは、世界最高級の香りで誰しもを魅了するアートギャラリーのように感じられることでしょう。

パフューマリアの常連客は、好みに合わせてカスタマイズした香りで香水を作ることもあります。
香りの世界
パフューマリアへようこそ

ブティックに入ると、世界で最も才能のある職人たちの手によって想像力豊かに作られた珍しい香りが、お客様を香りの旅へいざないます。アスリモスカのチームのスタッフは、それぞれの瓶の内容やレシピ、調合方法のポイントや、背景にある物語をひとつひとつ説明するので、お客様の魂に一番響く香水選びの参考にしていただけます。パフューマリアにご来店いただく多くのお客様の中では、アスリモスカ本人が「陽光のボトル(A bottle of sunshine)」として愛用しているプロフームム・ローマ製のアクアビバというシトラスベースの香りの香水が人気です。この香水を付けている人がいた部屋には香水に含まれるレモンオイルの香りが長く残り、夏のアマルフィ海岸を想いおこさせます。

希少でビンテージな香りの小さなボトルがパフューマリアのブティックを飾ります。
魔法の錬金術
シーンに合わせて香りを使い分ける

香水も服装のように、昼や夜、特別なシーン、季節や都市などに合わせて、使い分けられるべきだとマリアは言います。彼女はさらに、その時の気分に合わて香水を使い分けることもお勧めします。

複雑な香水になればなるほどその香りは強く広まるので、周りの人を何時間にも渡って魅了し続けることができます。フレデリック・マル(Frédéric Malle)の「貴婦人の肖像画(Portrait of a Lady)」はまさにそのような香水です。ローズとクロスグリのトップノートに香木とホワイトムスクのベースが見事に調和し、通りがかる人も「何の香水?」と足を止めることでしょう。

地元のおすすめ情報

調香師、マリア・アスリモスカとダブリンを探索

ダブリンの過去と現在の交差点から、セント・スティーブンス・グリーンの近くで見つけるクリエイティブなフュージョン料理、新装のナショナル・ギャラリーで必見のアート体験、そして五感を刺激するフェアシティ・ダブリンのツアーをお楽しみください。マリア・アスリモスカがローカルな視点からご案内します。

感覚で楽しむ

五感で楽しませてくれる、ダブリンの人気観光スポット

エリザベス女王によって1592年に設立されたトリニティカレッジの旧図書館 (College Green; + 353-1-896-1000)には、600万冊以上の貴重な本が収められています。歴史ある古書や手彫りの木の香りは、敬虔かつアカデミックな雰囲気にとても良く調和しています。ロングルームに高く積まれた本の中を散策するたびに、マリアはこの香りに魅了されます。

図書館の幅広い所蔵品は何世紀にも渡る学問的思想を反映していますが、コレクションの王者は間違いなくケルズの書でしょう。この中世の輝かしい手写本は紀元前800年にその歴史を遡ります。20万冊の古書が並ぶロングルームでは、毎日日替わりでこのケルズの書の340パターンのページの中から見開き2ページを展示しています。

何世紀もの歴史を体で感じた後は、外に出て新鮮な空気を楽しみましょう。図書館から10分ほど歩くと、22エーカーのセント・スティーブンス・グリーン公園があり、生き生きとした花や草の香りを思う存分お楽しみ頂けます。また、華やかな赤やピンク、黄色のチューリップ、そして公園内に作られた池を優雅に泳ぐ白鳥の雛などは、目も楽しませてくれます。

アートのニュース

新装したアイルランド国立美術館を体験

3200万ドルの費用と6年間の月日をかけた改装工事を経てアイルランド国立美術館(Merrion Sq. W.; + 353-1-661-5133)が再オープンを予定しています。ルーヴル美術館、およびワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アートとの共同プロジェクトで、「フェルメールと風俗画の巨匠たち」という画期的な国際展覧会と共に2017年6月に再びその扉を開きます。

調香師のマリア・アスリモスカは、美術館全体に展示された絶妙なキャンバスの中からインスピレーションを得るために、しばしばこの美術館へ足を運びます。特に感動的なのは、1670年にオランダ人巨匠のヨハネス・フェルメールが描いた「手紙を書く婦人と召使」のキャンバスです。窓から入り込む、なんとも言えない光源から放たれる柔らかい光によって照らされるこの情景は、日常の生活の一場面が魅惑的に描き出されています。

特別なディナー

アミューズな美味しい夜のひととき

ロマンチックな夜、また特別なお祝い事には、旬で新鮮な食材を使用したアミューズ (22 Dawson St.; +353-1-639-4889)のお食事がおすすめ。コナーとジョアンナのデンプシー夫妻が営む、居心地の良い40席のこのレストランは、繊細かつ驚きのあるフランコ・アジアのフュージョン料理が織り成すシックな美食劇場です。

3コースと5コースのテイスティングメニューには、白いアスパラガス、イベリコ豚、エノキ茸のピクルスを添えたオーガニックのヤギのチーズや、薄く切った大根をトッピングした鮪のカルパッチョ、そして繊細なお出汁の美味しいイカのラーメンなどがあります。

お食事の風味をより豊かにするワインのペアリングについては、アミューズのソムリエ、ジャン・バプティスト・レテノワと、レナ・デュハメルにご相談ください。料理の繊細な味に合った、幅広いワインリストをご用意しています。

人気のスピリッツ

レトロなスタイルのリカールームでタイムスリップ

シングルモルトのアイルランドウイスキーをロックで、または精密さと調和のとれたカクテルを味わうには、賑やかな1920年代を思わせる、地下のザ リカールーム (6-8 Wellington Quay; +353-87-339-3688)に向かいましょう。テンプルバー地区に位置するレトロなスタイルのこのお店は、ファーガス・オレアリーとミクソロジストの専門家チームが作り上げた高品質の創作カクテルと、週末のブラックラビットルームでのダークパール・バーレスクショー、そしてブームルームのダンスフロアで知られています。遊び心のあるイラストで各ドリンクの味を視覚的に説明しているスタイリッシュなメニューを駆使して、カクテルやお好みに合いそうな美味しい料理を探しましょう。ティーリング社製のウィスキーと、自家製のスパイスシロップ、アンゴスチュラのビターズとレモンなどで作られた「ザ・リバティーサワー」は、バーのお客様に人気の一杯です。