サマンサ・アクイム
人生を変えた日。サマンサ・アクイムはその日のことを、まるで昨日のことように覚えていると言います。
当時、リオデジャネイロで家族が経営するケータリング会社、アクイム・ガストロノミアで働いていたサマンサ。一流の料理学校エコール・ルノートルでの研修を終え、パティシエとして勢いに乗っていた時期でした。「ちょうど私たちの作ったチョコレートが賞を受賞して、大成功を収めたように感じていました」。
そんなある日、ブラジルのカカオ栽培者協会に所属する1人の紳士が、リオのアクイム・ガストロノミアを訪れました。サマンサの作るガナッシュとケーキが評判を呼んでいた頃でした。「その人の問いかけがきっかけで、私の人生は大きく変わりました」。サマンサはこう話します。「その人に『チョコレートのことは何もかも知っているのに、ココアのプランテーションを一度も見たことがないなんて、おかしいと思わないか?』と言われたのです。本当にその通りでした。チョコレートについてはあらゆることを学んできたつもりでしたが、実は何も知らなかったということに気づきました」。